
こんにちは。パンタグラフの中谷です。
いやー、みなさんやってきましたね。
花粉の季節が・・・
関係ない方もいらっしゃると思いますが、私はどっぷり花粉症です。
暖かくなってきて花粉以外はすごく素敵な季節なんですが・・・
というどうでもいい話はさておき、
春になると、毎年のように増えてくる相談があります。
「今年からOJT担当になりました」
「初めて後輩を持つことになりました」
「自分に務まるのか不安です」
といった内容です。
皆さんはいかがですか?
はじめてOJTを任されたとき、
ワクワクしましたか?
それとも、
「なぜ自分が」と感じましたか。
多くの方は後者です。
自分の業務はそのまま。
責任は増える。
しかも相手の成長に影響を与える立場になる。
これは決して軽い役割ではありません。
今日は、はじめてのOJTについて、
少し本質的な話をします。
結論から申し上げますね。
はじめてのOJTで最も大切なのは、教え方のテクニックではなく、「相手基準に立てるかどうか」です。
ここを外すと、どんなフレームワークも空回りします。
OJTがうまくいかない多くのケースは、
“自分基準”で進めてしまうことから始まります。
「自分の若い頃はこうだった」
「これくらい普通でしょ?」
「社会人なんだから当然だよね?」
この“当然”が危ない。
あなたにとっての常識は、
相手にとっての常識ではありません。
実際にあったケースをお話しします。
ある企業で、
30代の先輩が新卒のOJT担当になりました。
先輩は優秀でした。
仕事も早い。
論理的。
責任感も強い。
しかし、新人は3か月で退職しました。
理由は何だったのでしょうか。
面談で新人が言った言葉はこうでした。
「常に正しいことを言われているのは分かるんです。でも、自分が否定され続けている感じがしてしまって…」
先輩は人格否定をしていません。
暴言もありません。
ただ、その人にとっての基準が高すぎたんです。
「なぜここまで考えないの?」
「もっと自分で気づこうよ」
「これくらい当然だよね?」
本人は悪気がない。
むしろ育てたいと思っている。
でも、新人からすると、
常に“足りない人”として扱われている感覚になる。
ここにズレがあります。
だからこそ必要なのが、
相手基準に立つことです。
今、目の前の相手は、
どの段階にいるのか。
どこまでできていて、
どこでつまずいているのか。
それを見ずに、
自分の基準を当てはめてしまうと、
成長ではなく萎縮を生んでしまいます。
では、相手基準に立つとは何か。
まず必要なのは、
ゴールの明確化です。
OJTの目的は何でしょうか。
「早く一人前にする」
「戦力にする」
これは抽象的すぎます。
例えば営業職なら、
・3か月後に単独訪問ができる
・6か月後に月間目標を80%達成する
・1か月後に商品説明を一通りできる
ここまで具体化します。
期限と、客観的基準。
この2つが揃って初めて目標です。
よくある失敗は、
ゴールが曖昧なまま指導が始まることです。
「様子を見ながら」
「できるところから」
一見柔軟に見えます。
しかし新人側からすると、
何を目指せばいいのか分からない。
どこまでできれば合格なのか分からない。
この状態は不安を生みます。
できているのか。
足りないのか。
評価はどうなるのか。
ゴールが見えないマラソンは、
誰でも辛い。
だからまず、
ゴールを言語化する。
そして次に重要なのが、
伝わらないのが標準だと理解することです。
OJT担当者がよく言う言葉があります。
「ちゃんと説明したんですけど」
でも、そもそも「説明した=理解した」となるでしょうか?
例えば、こんなやり取り。
先輩:「この資料、もう少し分かりやすくまとめておいて」
新人:「分かりました」
翌日。
先輩:「なんでこうなったの?」
新人:「え…分かりやすくしたつもりなんですが」
ここで起きているのは、
能力不足ではありません。
認識のズレです。
“分かりやすい”の定義が共有されていない。
具体的に言うなら、
・1スライド1メッセージにする
・数字はグラフにする
・専門用語は補足をつける
ここまで言語化しないと、
相手の頭の中のゴールは一致しません。
曖昧な指示は、
相手に判断を丸投げしているのと同じです。
さらに大事なのが、
目的を伝えることです。
ある会社ではこんな事例がありました。
新人に毎朝、日報を書かせていました。
新人は不満を抱いていました。
「これ意味ありますか?」
「忙しいのに時間の無駄じゃないですか?」
上司は答えました。
「会社のルールだから」
これでは納得しません。
本当の目的は、
・業務の抜け漏れを防ぐ
・上司が早期にフォローできる
・成長の振り返り材料になる
ここまで説明して初めて、
意味が伝わります。
若手は特に合理性を重視する傾向にあります。
納得できない作業は続きません。
そして、
はじめてのOJTで避けて通れないのが、
「厳しさ」の問題です。
どこまで言っていいのか。
ハラスメントにならないか。
はっきりと言っておきますね。
正当な指導はハラスメントではありません。
例えば、
・締切を守らない
・報告を怠る
・同じミスを繰り返す
これを注意しない方が問題です。
ただし、
人格否定は絶対にNG。
「あなたはダメ」ではなく、
「この行動は基準に達していない」
ここを徹底する。
行動と結果にフォーカスする。
これができれば、
指導はブレません。
さらに重要なのが、
OJTを個人戦にしないことです。
実際にあった話です。
ある部署で、
OJT担当にだけ負担が集中しました。
自分の業務に加え、
新人のフォロー、
質問対応、
進捗確認。
結果、
担当者が疲弊し、
新人にも余裕がなくなり、
双方がストレスを抱えました。
理想は、
チームで育てることです。
複数の先輩と接点を持つ。
定期的に情報共有する。
業務量を一時的に調整する。
育成は組織戦です。
では、もう一つ具体的なケースを見てみましょう。
ある製造業の現場での話です。
OJT担当のAさんは、
非常に責任感の強い方でした。
「自分が教える以上、完璧に育てたい」
その思いは本物だと思います。
新人のBさんが作業を間違えたときも、
丁寧に説明しました。
Aさん:
「ここはこういう理由でこの順番なんだよ。理解できた?」
Bさん:
「はい、分かりました」
翌日、同じミスが起きました。
Aさんの中で、
少しイライラが生まれます。
「昨日説明したよね?」
「なんでまた同じことになるの?」
ここでAさんは強くは言いませんでした。
でも、表情は固くなりました。
声のトーンも少し低くなりました。
Bさんはそれを感じ取ります。
「またやってしまった」
「自分は向いていないのかもしれない」
実はBさんは、
作業の“意味”は理解していました。
しかし、現場のスピードに慣れていなかった。
焦りから確認を省いてしまったのです。
Aさんは“理解不足”だと思っていた。
Bさんは“焦り”でミスをしていた。
ズレています。
ここで必要なのは、
原因の特定です。
なぜミスが起きたのか。
理解不足なのか。
スキル不足なのか。
経験不足なのか。
心理的なプレッシャーなのか。
ここを見極めずに
「もう一度説明する」だけでは解決しません。
OJTとは、
作業を教えることではなく、
相手の状態を観察し、適切な支援を選ぶこと
です。
では成功事例はどうだったのか。
別の部署で、
同じように新人が同じミスを繰り返しました。
そのとき先輩はこう聞きました。
「今、どこが一番難しいと感じてる?」
新人は少し黙ってから答えました。
「正直、スピードについていくのが怖いです。焦ってしまって…」
ここで初めて、
本当の原因が出てきました。
先輩は言いました。
「じゃあ今日はスピードよりも確認を優先しよう。時間がかかってもいい。そこはフォローする」
結果、
ミスは減りました。
何が違うのか。
技術ではありません。
相手の内側を聞いたかどうかです。
ここが違いとなります。
はじめてのOJT担当者は、
「教えること」に意識が向きます。
でも本当に大事なのは、
「聞くこと」
なんです。
今、何を感じているのか。
どこで止まっているのか。
何が怖いのか。
これを引き出せるかどうかで、
育成の質は大きく変わります。
そして、もう一つ重要な視点があります。
それは、
OJTは新人を育てるだけでなく、組織文化をつくる行為だということ。
新人は、OJT担当を通して
会社の文化を感じ取ります。
質問しやすい雰囲気か。
失敗が許容される空気か。
挑戦を応援する風土か。
OJT担当の態度が、
そのまま会社の印象になります。
ここまで考えられていますか?
「自分はただの担当者だから」
ではありません。
あなたは、
その新人にとって“会社そのもの”です。
ではここから、もう一段踏み込みます。
OJTがうまくいかなくなる瞬間というのは、実は「大きな事件」が起きたときではありません。
小さなすれ違いが、積み重なったときです。
例えば、新人が少しずつ質問をしなくなる。
報告が簡素になる。
目を合わせる時間が減る。
こうした変化を、「成長してきた」と都合よく解釈してしまうことがあります。
しかし実際は、逆の場合もある。
「聞きづらい」
「また否定されるかもしれない」
「迷惑をかけたくない」
こうした感情が、沈黙を生みます。
辞める直前の新人は、突然爆発するわけではありません。
静かになります。
ここに気づけるかどうか。
これがOJT担当者の分かれ目です。
ある企業での話です。
入社半年の社員が退職を申し出ました。
理由は「合わないと思ったから」。
面談を重ねていくと、本音が出てきました。
「相談しても、いつも正論で返ってくるんです。間違っていないのは分かるけど、しんどかったです。」
上司は優秀でした。
論理的でした。
間違ったことは言っていませんでした。
でも、新人が欲しかったのは「正解」ではなく「共感」だった。
この違いは大きい。
OJTは、正しさを伝える仕事ではありません。
成長を支える仕事です。
そのためには、ときに正論を少し横に置く勇気も必要です。
では、明日から何を意識すればいいのか。
一つ、使いやすい問いがあります。
「今、どこが一番引っかかってる?」
この問いは強い。
なぜなら、相手の内側を引き出すからです。
もう一つ。
「ここまでで、自分では何点くらいだと思う?」
これは自己評価を促します。
一方的な評価ではなく、対話になります。
さらに、
「もし次やるとしたら、何を変えたい?」
この問いは、思考を未来に向けます。
指導が“詰め”にならず、“前進”になります。
OJTは、教えることではなく、
対話を通じて考える力を育てることです。
そして最後に、組織視点です。
OJTが機能している会社には共通点があります。
・育成を個人任せにしない
・失敗事例を共有する
・OJT担当を評価対象にする
つまり、「育てる文化」がある。
逆に、OJTが形骸化する会社は、
・担当者の善意に依存する
・業務優先で育成が後回し
・成果だけを見る
こうした傾向があります。
はじめてのOJTは、不安で当然です。
でも、その役割は決して“罰ゲーム”ではありません。
あなたが誰かの成長に本気で向き合った経験は、
必ずあなた自身の土台になります。
ここで一つ、正直な話をしますね。
相手基準に立つことは、簡単ではありません。
なぜなら、人は無意識に「自分の成功体験」を基準にしてしまうからです。
自分はこうやって成長してきた。厳しく言われて伸びた。失敗して覚えた。
その経験は間違いではありません。
しかし、それは“あなたの物語”です。
目の前の相手には、相手の物語があります。
相手基準に立つということは、
自分の成功体験を一度横に置くことでもあります。
これが難しい。
ときには、
「甘やかしているのではないか」
「自分のときはもっと大変だったのに」
そんな感情も出てくるでしょう。
でも大丈夫です。
相手基準に立つことは、
基準を下げることではありません。
成長までのルートを、その人に合わせて設計することです。
ゴールは同じでも、
ルートは違っていい。
山の頂上は一つでも、
登り方は複数あります。
OJT担当者の役割は、
「自分が登った道を押し付けること」ではなく、
「その人が登れる道を一緒に探すこと」です。
ここまでできれば、
OJTは作業指導ではなく、
人材育成になります。
いかがでしたか?
はじめてのOJTで大切なのは、
完璧な指導ではありません。
相手基準に立ち、
具体的に伝え、
目的を共有し、
対話を重ねること。
そして、チームで支えること。
それができれば、
OJTは大きく外しません。
ぜひ、目の前の一人に真剣に向き合ってみてください。
その姿勢こそが、最大のOJTです。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。